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海と葡萄酒と雪の細長い花びら [エトセトラ]

チリが生んだノーベル文学賞詩人、パブロ=ネルーダが母国を表現した言葉。

日本からはちょうど地球の反対側にある南米の国、チリ。
学生時代、何かの講義で紹介された記憶がある、一冊の本。
『戒厳令下チリ潜入記-ある映画監督の冒険』(岩波新書)

この本によって私は、初めて知りました。
1970年に世界で初めて選挙によって誕生した社会主義政権、アジェンデ政権のことを。
アメリカ資本の支配を排して銅山を国有化し、農地改革を断行して大土地所有制度を解体し、
年金・医療・教育など福祉政策を打ち出し、労働者の賃金を引き上げ、「自由と民主主義」を
掲げた社会主義建設にチリが向かっていたことを、知りました。

またこの実験が、1973年に軍事クーデタという形で葬り去られたことを知りました。
それは、アメリカ政府(CIA)や外国の巨大資本、及びそれと結びついた国内の有産階級が
さまざまな手段で政権に圧力をかけ、貧しく虐げられてきた人々の希望を無惨にも打ち砕いた
ということだったと。

その後17年間続いたピノチェト将軍の軍事独裁政権による激しい人権侵害のことを知りました。
軍事クーデタによってアジェンデ政権を支持する多くの人々が殺されたこと。独裁政権に反対する
多くの人々が拷問の末に虐殺されたり、強制収容所へ送り込まれたりしたこと。
その数は数万人にものぼること。捕らえられた人々が行方不明者として処理されていること。
祖国を捨て外国に亡命した人がたくさんいたこと。軍事独裁に対する批判が封殺され、多くの
チリ国民は長く自由が保障されなかったこと。

そんなことがあったことを、この本に出会うまで私は、まったく知りませんでした。

戒厳令下チリ潜入記―ある映画監督の冒険

戒厳令下チリ潜入記―ある映画監督の冒険

  • 作者: G.ガルシア・マルケス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1986/12
  • メディア: 新書


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ケルトの魂~その5 [エトセトラ]

いったいいつからだろう、アイルラアンドに関心を持ったのは・・・?

昨年末に『麦の穂をゆらす風』という映画を観ました。
アイルランドが、ようやく自由を手に入れようとしていた1920年代を描いた映画です。

12世紀にイングランド王ヘンリ2世(プランタジネット朝の初代の王であの『マグナ=カルタ』
を承認した有名なジョン王の父)がローマ教皇から与えられて以来、およそ700年以上も
イギリスはアイルランドを支配してきました。
かつてアパルトヘイト(人種隔離政策)を実施していた南アフリカのある政治家は、
「うちはアイルランドよりましだ」と言ったそうです。また日本が36年間にわたって植民地
として支配した朝鮮半島での政策は、言語・宗教・教育などイギリスのアイルランド支配を
モデルにしたという話を聞いたことがあります。
18世紀の産業革命によってイギリスの食糧基地となり、貧しい農民は小麦を輸出する
代わりにジャガイモを主食にしたこと。そして1840年代のジャガイモの胴枯れ病による
大飢饉で、100万人以上が餓死し、以後数百万人がアメリカへ移民したことなど、
この国の人々の悲しみの記憶は尽きません。

どこまでも果てしなく、悲しみを繰り返してきたアイルランドの歴史を語り出すと、
いつの間にか冗舌になり、自然と50分の授業になったことがありました。
ケルト音楽、『ガリバー旅行記』、「ボイコット」、ミッキー・マウス、タイタニック号、
J・F・ケネディ、ザ・ビートルズ・・・・・。

大天使ミカエルの崇拝が盛んであったアイルランドで人気のある名前が「マイケル」。
この「マイケル」の愛称「ミッキー」が、アメリカではアイルランド移民やカトリック、
ジャガイモを指した差別用語だったこと。そして、アイルランド移民の子孫であった
ウォルト・ディズニーが、人々から嫌われていた動物=ネズミに、あえてミッキーと
名づけ、それが今や世界中で愛されるキャラクターになったこと。
こんな話をすると生徒は目から鱗が落ちたような表情になりました。

世界史の面白さを痛感するのは、こういう瞬間なのでしょう!

しかし、歴史の因果を越えて、アイルランドの民族の悲劇は、私たちにとって
何がいちばん大切なのかを、切実に問いかけてくるのです。

アイルランドからアメリカへ―700万アイルランド人移民の物語

アイルランドからアメリカへ―700万アイルランド人移民の物語

  • 作者: カービー ミラー, ポール ワグナー
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1998/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

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見よ、勇者は帰る [エトセトラ]

甲子園の高校野球といえば、夏の風物詩。グラウンドの熱戦ももちろんですが、
アルプススタンドの応援風景にもつい目がいきます。とりわけ炎天下で顔をまっ赤に
して汗をぬぐいながら演奏している吹奏楽部の生徒の必死の表情が印象的。

さて、吹奏楽は、甲子園での応援のように、志気を高め、味方を鼓舞し、勝利を
目指して激励するための演出効果としては絶大です。
そもそも吹奏楽は、オスマン=トルコ帝国の軍楽隊の影響を受けてヨーロッパで
発展したもの。では、吹奏楽が日本で初めて演奏されたのはいつか?

横田庄一郎著『西郷隆盛惜別譜』によれば、日本と西洋音楽との最初の出会いは、
1549年に来日したフランシスコ=ザビエル以後のキリスト教布教と南蛮貿易の時代
であり、2度目の出会いは、幕末の黒船来航の時期であった、ということです。
ペリー来航に先立って、1844年にオランダ国王が開国を促す親書を幕府に
もたらしましたが、この時に長崎に到着した使節団が軍楽隊を先頭に行進したという
記録があるとか。その後同じく国書を携えたアメリカのペリーも、ロシアのプチャーチンも
上陸の際には軍楽隊の演奏に続いての行進しました。

ペリー来航から20数年後、軍楽隊の演奏は日本人(薩摩藩の若者たち)の手に
よってなされるようになりました。

1877(明治10)年9月23日の夜、日本最後の国内戦争となった西南戦争最後の局面。
政府軍の軍楽隊は、城山に立てこもる、かつての維新の最大の功労者・西郷隆盛に対して、
惜別の曲を演奏したという記録。果たしてその曲は何だったのか・・・・・?
この劇的なドラマとそこに隠された謎を追ってゆくのが、『西郷隆盛惜別譜』です。

西郷隆盛 惜別譜

西郷隆盛 惜別譜

  • 作者: 横田 庄一郎
  • 出版社/メーカー: 朔北社
  • 発売日: 2004/03
  • メディア: 単行本


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教室で銅鐸を [エトセトラ]

今年は久々に日本史の授業も担当。
古代史の間は、教室に持ち込むグッズには事欠きません。
打製石器、黒曜石、古代米(赤米・黒米)、イネ(稲穂)、麦、金印、埴輪、
繭玉、生糸、論語など。

銅鐸もそのひとつ。
悪霊をはらったり、豊作を祈るための祭りで使用されたらしいのですが、
よくわからない面も・・・。古代史は謎が多いから興味が尽きない!

私の趣味の教材収集には、強力なサポーターがいます。
数年前に、どうしても翌日の授業で埴輪を見せたくなり、電話。
「もしもし、埴輪買ってきてくれる?」
「はい、了解」
某○○ハンズの博物館コーナーへ行き、「埴輪くださーい」と言って
出てきたものに対し、「それは埴輪じゃありません。土偶というものです!」
「埴輪というのは・・・」と店員さんに指導を入れるくらいの教材ゲッターぶり。

彼女にとっては銅鐸をゲットするのもたやすいこと。
「銅鐸が欲しいなあ」と言ってから、4日後には宅急便が到着。
滋賀県野洲町の銅鐸博物館から復元銅鐸のお取り寄せ。
日本最小の12.5㎝の銅鐸を実物大で復元したレプリカが、目の前に。
銅76%、錫16%、鉛8%の比率で鋳造された銅鐸の内側には、棒が吊り下げ
られており、上の部分を持って揺らすと、何とも言えない「キ~イ~ン」という
長く残る金属音が響きます。

我が家の強力なサポーターのおかげで、弥生時代の授業の時は、
いつも教室に古代の音色が響きます。



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独房の窓から射す光 [エトセトラ]

『白バラの祈り ~ゾフィー・ショル、最期の日々』という映画を
観ました。1943年、ミュンヘン大学の学生ゾフィーが、彼女の兄
とともに「ヒトラー打倒」のビラを印刷・配布して逮捕され、死刑に
なるまでの5日間を描いた、実話をもとにした映画です。

ヒトラー独裁政権下のドイツで、勇気をもって戦争反対の意思表示
をし、自由を叫んだ21歳のゾフィー。しかし、スターリングラードの
戦いで大敗北を喫したとはいえ、ナチスは依然とし強大な存在で、
1人の大学生の勇気は無惨にも打ち砕かれます。
ゲシュタポによる厳しい尋問、形式だけの人民法廷を経て、
逮捕からたった5日での処刑。

恐怖と不安におののきながらも、毅然として振る舞っていた彼女が
処刑前の独房に入る際に、すぐに別れの手紙を書くように看守に
言われた直後、初めて絶望の叫びをあげたシーン。この場面の
残酷さは、いまだに私の心に突き刺さったままです。

一方、彼女が光の射し込む独房の窓の外を眺めるシーンがあります。
良心を守り通し、自分に正直に生きた彼女が、光の中に、いつか自由な
時代が訪れることを確信しているかのような、美しく尊厳に満ちたシーン
です。

この映画の冒頭、そして最期に流れるのはジャズです。
戦時下のドイツで、ゾフィーたち若者は、どんな思いでジャズを聴いて
いたのか・・・。

ゾフィー21歳―ヒトラーに抗した白いバラ

ゾフィー21歳―ヒトラーに抗した白いバラ

  • 作者: ヘルマン フィンケ
  • 出版社/メーカー: 草風館
  • 発売日: 2006/02
  • メディア: 単行本


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