ケルトの魂~その5 [エトセトラ]
いったいいつからだろう、アイルラアンドに関心を持ったのは・・・?
昨年末に『麦の穂をゆらす風』という映画を観ました。
アイルランドが、ようやく自由を手に入れようとしていた1920年代を描いた映画です。
12世紀にイングランド王ヘンリ2世(プランタジネット朝の初代の王であの『マグナ=カルタ』
を承認した有名なジョン王の父)がローマ教皇から与えられて以来、およそ700年以上も
イギリスはアイルランドを支配してきました。
かつてアパルトヘイト(人種隔離政策)を実施していた南アフリカのある政治家は、
「うちはアイルランドよりましだ」と言ったそうです。また日本が36年間にわたって植民地
として支配した朝鮮半島での政策は、言語・宗教・教育などイギリスのアイルランド支配を
モデルにしたという話を聞いたことがあります。
18世紀の産業革命によってイギリスの食糧基地となり、貧しい農民は小麦を輸出する
代わりにジャガイモを主食にしたこと。そして1840年代のジャガイモの胴枯れ病による
大飢饉で、100万人以上が餓死し、以後数百万人がアメリカへ移民したことなど、
この国の人々の悲しみの記憶は尽きません。
どこまでも果てしなく、悲しみを繰り返してきたアイルランドの歴史を語り出すと、
いつの間にか冗舌になり、自然と50分の授業になったことがありました。
ケルト音楽、『ガリバー旅行記』、「ボイコット」、ミッキー・マウス、タイタニック号、
J・F・ケネディ、ザ・ビートルズ・・・・・。
大天使ミカエルの崇拝が盛んであったアイルランドで人気のある名前が「マイケル」。
この「マイケル」の愛称「ミッキー」が、アメリカではアイルランド移民やカトリック、
ジャガイモを指した差別用語だったこと。そして、アイルランド移民の子孫であった
ウォルト・ディズニーが、人々から嫌われていた動物=ネズミに、あえてミッキーと
名づけ、それが今や世界中で愛されるキャラクターになったこと。
こんな話をすると生徒は目から鱗が落ちたような表情になりました。
世界史の面白さを痛感するのは、こういう瞬間なのでしょう!
しかし、歴史の因果を越えて、アイルランドの民族の悲劇は、私たちにとって
何がいちばん大切なのかを、切実に問いかけてくるのです。
アイルランドからアメリカへ―700万アイルランド人移民の物語
- 作者: カービー ミラー, ポール ワグナー
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1998/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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