明日に架ける橋 [モノローグ]
高校生ともなると、合唱には抵抗を感じるものですが、最初の赴任校は、学校祭で
市の文化会館を貸し切って合唱コンクールを行なうような熱の入れようでした。
3年生ともなると、最後の学校祭での優勝を目指して、本当にクラス一丸となって合唱に
取り組みます。
今思えば恥ずかしくなるのですが、選曲でクラスの担当の生徒と大喧嘩して、
担任の好みの曲を押しつけたという苦い思い出も。にもかかわらず、多くの生徒たちは
最後の学校祭で必死に練習してくれました。しかし、力及ばず結局は惨敗。本番終了後
に何人かの女の子が号泣していた光景も忘れられません。
その時、クラスで歌ったのが『明日に架ける橋』でした。
NHKのBS放送の『世紀を刻む歌』は、時代を超え、海を越え、歌い継がれる
歌に焦点をあてた番組です。
今晩はサイモン&ガーファンクルのヒット曲『明日に架ける橋』を、女優の緒川たまきさん
の旅とともに紹介していました。
60年代のアメリカ。公民権運動とヴェトナム戦争。そうした激動の時代のさなか、
人々の対立が絶えず、そして憎悪が渦巻く社会に、癒しを与えるように、
ポール=サイモンが生み出した曲が『明日に架ける橋』です。
アメリカで生まれたこの曲は、1970年代に遠く海を渡り、南の大地へ。
カヴァーしたアレサ=フランクリンの歌声とともに、アパルトヘイト(人種隔離政策)を
実施する南アフリカへ伝わります。荘厳で高みに登っていくあのメロディは、ゴスペル調
に歌われ、それが虐げられて神に祈るしかない黒人たちに受け容れられていった
そうです。そしていつしか、教会で讃美歌としても歌われ出すのです。
悩みを1人で抱え込まず、困難を乗り越えて。君のために私は、荒れた海に架かる橋の
ようにその身を横たえるから。自己犠牲さえも厭わず、静かに大切な人に呼びかける
この歌。やがて新しい旅立ちの時を迎える、そしてその時が来たんだ、という3番の歌詞は
アパルトヘイトを脱した南アフリカの黒人たちの未来を歌っているかのようだ、と。
誰かが誰かの架け橋になっているのかな、と思わせ、人と人をつなぐ歌であることに
改めて思いを馳せた1時間でした。この歌がこれからもずうっと、人々によって歌い継がれ
てゆくことを夢想しながら・・・。
久しぶりにCDを手にしました。
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