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旅ニ病ンデ夢ハ枯レ野ヲ駆ケメグル [モノローグ]

忙しいことに慣れ、日常にあまりに埋没して時間を過ごしていると、
ふいにそこから無性に抜け出したくなる時があります。

けれど、どうしても物理的に逃げ出せない、という状況もある。
そんな時こそ、書ヲ読ム・・・。

書店で惹かれて手にとった、しかし、長く書棚に埋もれていた本を、
思い出しては掘り起こし、毎夜恐る恐る、少しずつ少しずつページをめくっていく。
それが、400年前の、万里の波濤を越えた苦難の旅の話なら、
日常から逃げ出せない自分の心を、無理やり主人公の心に重ね合わせて、解き放ちたい。

天正遣欧使節(1582~90年)の陰に隠れて、やや地味な印象を拭いきれない、
支倉常長らの慶長遣欧使節団(1613~20年)。
徳川の天下が確かなものになりつつあったこの時代、スペインと手を結び世界を夢見た
仙台藩主伊達政宗の命を受け、サムライたちは、未知なる太平洋を渡ってメキシコへ。
そして遥かな大西洋を航海してヨーロッパの地を踏む。
セビリヤ、マドリード、フィレンツェ、永遠の都ローマ。

前途への不安。言葉や習慣の壁。肉体も精神をもむしばむ命を懸けた船旅。
そして何よりも望郷の思い。
彼らを最初に受け容れ、彼らを見送ることになる、スペインの小さな町コリア・デル・リオに
ハポン(日本)という姓をもつ人々が暮らし、日本とよく似た田園風景が広がるという。
生きて故国の地を、という望みを捨て、自ら異郷に留まったサムライたちがいた可能性に、
歴史の波間に漂っては消えた人間の悲哀を感じざるを得ない。

本の中、想像の旅ではなく、いつかそうした人々の足跡を
少しでも自分の足でたどることができたら、と・・・。



ヨーロッパに消えたサムライたち (ちくま文庫)

ヨーロッパに消えたサムライたち (ちくま文庫)

  • 作者: 太田 尚樹
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2007/01
  • メディア: 文庫



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