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カトリックの逆襲 [リポート]

「改革」というと清新なイメージを抱きますし、変化に対応する
柔軟性を感じさせます。宗教改革もまさにそう・・・。

反対に、これまで受け継いできた伝統を尊重し、時代や社会の
変化に関係なく守るべきものもあるでしょう。
「エラスムスが生んだ卵を、ルターがかえした」という言葉が
ありますが、カトリック教会から見れば、宗教改革は毒蛇の卵がふ化
してしまったという嫌悪すべき出来事なのです(ちなみに私は
どちらの味方でもありません・・・念のため)。

宗教改革を、「音楽」という切り口で注意深く見てみると、その対比が
よくわかります。
プロテスタントの讃美歌は民謡からメロディを採用しているものが多く、
簡潔で力強い旋律はドイツ語の発音に非常に合っていると言われます。
それまで宗教歌はラテン語で歌われるのが普通でしたが、この時代は
各地で自国語で歌われるようになりました。これはルネサンス思想の影響
に他なりません。

ルターやカルヴァンの宗教改革に対し、カトリック内部の改革を「反宗教
改革(対抗宗教改革)」と言います。1545~63年に開催されたトリエント
公会議では、ロ-マ教皇の至上権が確認され、禁書目録の制定など
カトリックによる思想統制が行なわれたことで有名です。
また公会議では、音楽に関して、流行歌や楽器を排除した人間の声だけの
純粋な音楽が理想とされました(もともと教会は楽器を世俗的とみなして
いました)。しかしプロテスタントへの対抗か、それまでと比べて歌詞が
よくわかることが奨励されるようになりました。

パレストリーナ(1525頃~94)の『教皇マルチェルスのミサ曲』は、
ちょうどトリエント公会議開催中の1562年頃にできた曲と言われて
います。教皇に選ばれてからわずか3週間で没したマルチェルス2世
でしたが、「厳粛な礼拝にふさわしい歌い方、そして聴いていて
よくわかる音楽」を、と聖歌隊に指示しています。

パレストリーナのこの清く澄んだミサ曲は、無伴奏(つまりア・カペラ)の
宗教合唱曲のお手本として、後世にも大きな影響を与えましたが、
歌詞についても、伝統的なグレゴリオ聖歌、聖母マリアや三位一体説が
歌い込まれており、教会を絶対的なものとみなすカトリック信仰の特徴が
よく出ています。

パレストリーナ―その生涯

パレストリーナ―その生涯

  • 作者: 金沢 正剛, リーノ ビヤンキ
  • 出版社/メーカー: カワイ出版
  • 発売日: 1999/03
  • メディア: 単行本


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